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第68回『鈍感力』(渡辺淳一著)

小泉前首相が、

「目先のことに鈍感になれ。鈍感力が大事だ。
 支持率が上がったり下がったりするのをいちいち気にするな」

と安倍内閣の閣僚にアドバイスしたことで、
一躍注目を浴びたのがこの『鈍感力』です。

著者の渡辺淳一さんは、映画化されて話題になった『失楽園』や『愛の流刑地』
など、
ドロドロの恋愛小説を書く作家さんというイメージがありましたが、
この『鈍感力』では、それらとは異なる一面を見せてくれています。

たくさんの恋愛小説を書いてきた作家さんであれば、
ふつうなら敏感さを重視しそうなイメージがありますが、
この本では、「愛の女神を射止めるために」こそ鈍感力が必要だとしていますし、
「結婚生活を維持するために」は、いっそう切実となるそうです。


というのも、恋人として関係を持ったばかりの頃であれば敏感さが必要とされま
すが、
その関係を維持し、結婚にまで結び付けようというのであれば、
部屋が雑然としているとか、歯磨きのチューブが末端から押し出されていないとか
些細なことは大らかに許してあげるくらいの「鈍感力」がなければ、
その関係は成り立たないからなのです。

些細なことに動じず大らかに構えているこの「鈍感力」は、
他の場面においても有効で、
たとえば会社で、貧乏ゆすりが激しいなど相性の悪い同僚と隣席したり、
上司に激しく叱責されたり、あるいは理不尽な嫉妬を受けたりしても、
「鈍感力」で水に流してあげることができるというわけです。

もともと医師であった著者は、科学的に見ても、
「鈍感力」は、自律神経をゆったりさせたり、
そのためにガンへの予防効果もあったりということで、
とても効果のある感性だと説明してくれています。


そういったわけで、ひりひりと傷つき易い、鋭く敏感なものより、
たいていのことではへこたれない、鈍く逞しいものこそ、
現代を生き抜く力であり、知恵でもあるということを
著者は言おうとしているのだと思います。


確かに、「鈍感力」の重要性は理解できるとして、
「敏感力」との兼ね合いはどうなるのでしょうか。

その点について、小泉前首相が「鈍感力」に触れたことを受け、
著者の渡辺さんはこのようにコメントしたそうです。


「政治家は、政策を立案するまでは多くの意見に敏感であるべきだが、
 いったん政策を決めてそれを貫いていく時は、鈍感力がないと実行できないと
思う。」

http://www.nikkansports.com/general/p-gn-tp0-20070223-160602.html   


「企画・立案」や「見積もり」の際は敏感力が必要だが、
いざ「実行」となれば鈍感力が必要ということなのだろうと思います。
何でも無闇に実行するのは無謀ですが、
慎重に検討したうえで決定したことであれば、
失敗しようと成功しようと結果が出るまで実行することのほうが大事なのでしょう。


仕事も恋愛も、決断するまでは慎重で、あとは細かいことを気にせず、とにかく
実行。

これが、私がこの本から受け取ったメッセージです。



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